第一夜

横浜駅のみなみ東口に出る階段を登り、狭い通路を抜けると外は雨だった。siriに聞いた天気予報は曇りだったのに。雨が降るのは夜の9時を過ぎてからのはずなのに。折り畳み傘も持ち合わせていないから雨に好き放題打たれながら、郵便局前でティッシュ配りをしているお姉さんを通り過ぎる。何百回もこの道を通っているけど、未だにティッシュをもらったことがない。もらうタイミングを失ってしまった。

みなみ東口は西口に比べると人通りも少なくて、居酒屋やパチンコの代わりにスーパーやチェーン店のカフェがある。少し時間ができると、そのカフェについつい寄ってしまう。地下の隅っこの席がボクのお気に入りだ。ただ、真横にある壁鏡はどうにかならないものか。ここに来ると、無理やり自分の心に余裕を持つことができるような気がした。